対処するだけでなく、
日々の予防が大切
痔の予防のためには、痔につながるおしりへの負担の原因や痔を悪化させる要因を正しく理解し、おしりへ負担をかけない習慣をつくることが大切です。実践してみましょう。
総合監修 岩垂 純一 先生
監修 黒川 彰夫 先生
監修 佐原 力三郎 先生
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予防1
皮膚の免疫・
防御機能の向上
肛門の皮膚・粘膜が弱まり、ダメージを負いやすい状態になると、肛門のバリア機能が低下し、ひいては痔の原因につながることも。
そうならないために
心がけたい日々の習慣
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予防2
胃腸の機能・
環境の改善
腸内環境が乱れることで痔の原因となる便秘や下痢が引き起こされることも。
そうならないために
心がけたい日々の習慣
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予防3
血液循環の改善
肛門まわりの血管がうっ血すると患部がはれやすくなり、いぼ痔につながることも。
そうならないために
心がけたい日々の習慣
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予防
1
- 皮膚の免疫・
防御機能の向上
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おしりの清潔を保とうと、ゴシゴシ洗ったり拭いたりしていませんか?
実はこれらの行為、度が過ぎると肛門まわりの皮膚にダメージを与えてしまい、乾燥や荒れに繋がります。
これらはすべて皮膚のバリア機能を低下させることとなり、かゆみやヒリヒリとした痛みなどを引き起こし、ひいては痔につながる可能性も。
そうならないためにも、生活の中で以下を心がけましょう。
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・座りっぱなしにならないようにする
長時間座りっぱなしの姿勢などで、肛門まわりが蒸れることも、実はバリア機能の低下につながります。おしりが蒸れると、皮膚の角質層はふやけて剥がれやすくなり、同時に皮膚の保湿成分が溶け出してしまい、また皮膚からの水分蒸発も防げなくなってしまうため、結果的に皮膚の乾燥に繋がってしまうのです。そうならないよう、ときどき立って軽い体操をするなど、座りっぱなしが長時間続かないように気を付けましょう。
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・おしりはていねいに拭く
おしりは、便のカスなどが残ったままにならないよう、普段からていねいに拭くようにしましょう。ただし、ゴシゴシこするのではなく、紙を押しあてるようにして優しく拭くようにしましょう。
また、多くの人は排便後におしりを紙で拭くだけで十分ですが、便の質、年齢などによっては、何回も拭かないと便が取れにくい場合もあります。こうした場合は、トイレの温水洗浄機能などを使って温水で洗うようにするとよいでしょう。
ただし、おしりの皮膚はデリケート。強い水圧で洗ったり、洗いすぎたりすると皮膚炎を起こしてしまうこともあるので注意しましょう。
POINT
おしりの優しい洗い方
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1.紙で優しく拭き取る
紙でゴシゴシこすると、肛門のシワやくぼみの中に便をすりこんでしまいます。さらに、皮膚が刺激されて、かえって痔の症状をひどくしてしまいます。紙を押しあてるようにして優しく拭き取りましょう。
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2.ぬるま湯で洗い流す
トイレの温水洗浄機能を使って優しく洗い流します。温水便座がない場合は、お風呂のシャワーを利用するとよいでしょう。水流は強くしすぎないようにしましょう。
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3.しっかり乾かす
タオルを使って水分を拭き取ります。ゴシゴシこするのではなく、押しあてるようにして優しく拭き取りましょう。
「温水洗浄便座症候群」にご注意!
最近は、「温水洗浄便座がないと便が出にくい」という人も増えていますが、日常的にそのような用途で使っていると、「温水洗浄便座症候群」になってしまう可能性があります。「温水洗浄便座症候群」とは、洗いすぎて皮膚炎を起こしてしまったり、温水洗浄便座機能を浣腸的に使うことで、だんだん刺激がないと便が出にくくなったりすることをいいます。温水洗浄便座の使用方法や回数にも注意しましょう。
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予防
2
- 胃腸の機能・
環境の改善
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便秘や下痢は、痔の大きな原因の1つです。便秘による硬い便は、肛門を傷つけてしまいます。
下痢も肛門を刺激したり、細菌感染を起こしやすくしたりします。腸内の悪玉菌が増えることが、便秘や下痢を引き起こす原因になることも。
悪玉菌よりも善玉菌が多くいる環境を保つためにも、生活の中で以下を心がけましょう。
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・食生活を見直す
ヨーグルトや納豆など善玉菌そのものや、善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維をとるなど、腸内の善玉菌を増やす食生活を意識しましょう。また、辛い食べもの、アルコールなどは腸を刺激するため、控えるようにしましょう。
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・水分を多めにとる
腸の内容物の水分は、腸壁からどんどん吸収されるため、水分が不足すると便が硬くなってしまいます。そうならないためにも、成人で1日約2Lの水分をとるよう心がけましょう。
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・無理なダイエットはしない
極端に食事の量を減らすような無理なダイエットはせず、食事はしっかりとりましょう。食事の量が少ないと便のかさが増えません。少量の便ではなかなか便意が起こらず、便秘になりやすくなります。栄養素のバランスがよい食事を心がけるとともに、食物繊維をしっかりとるようにしましょう。
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・適度な運動を
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動も、腸の動きを活性化させます。
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・きちんと睡眠をとる
睡眠時や、リラックスしているときに働く副交感神経が消化管の動きを活発にします。
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・ストレスをためない
精神的ストレスにより自律神経が乱れ、腸の働きが悪くなることも。自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
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予防
3
- 血液循環の改善
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肛門まわりの血流が悪くなることは、痔を発生させたり、悪化させたりする原因のひとつと言われています。肛門まわりの血行をよくするよう、生活の中で以下を心がけましょう。
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・同じ姿勢を続けない
ずっと座ったままだったり、立ったままだったりと、同じ姿勢を続けていると、肛門がうっ血してしまいがちになります。休憩時間に軽い体操をするなど、適度に体を動かすことが大事です。
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・お風呂は湯船にゆっくりつかる!
入浴は、痔の自己予防法として効果的なものの1つです。肛門が清潔に保たれるだけでなく、おしりが温まることで肛門のうっ血が改善されるので、毎日の習慣にしたいものです。大切なのは、シャワーだけではなく湯船にゆっくり入ること。半身浴でもかまいませんので、ぬるめのお湯でじっくり入るようにしましょう。
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・トイレは3~5分が目安
排便は3~5分程度とし、出ないときは無理せず切り上げるように習慣づけましょう。まだ便が残っているような気がしても無理に出しきろうとしてはいけません。長時間、強くいきむと肛門に負担がかかり、うっ血や出血につながってしまいます。排便は、便意をもよおしたときに無理なくするようにしましょう。