下痢を引き起こす原因は?急性下痢と慢性下痢ではどう違う?
下痢のときの便と腸内はどんな状態?
一般的に、水分の多い液状の便を何度も排泄する状態を「下痢」と呼んでいますが、医学的な定義の1つに「糞便中の水分量が1日あたり200mL以上または水様便を1日3回以上排出する場合」があります1)。 通常、1日に排出する便は150g前後で、水分の割合は70%程度。これが80%を超えると泥状に、90%を超えると水様になります。
下痢は、腸が波打つように動く蠕動(ぜんどう)運動の亢進や低下で、大腸の内容物の通過時間が早くなったり遅くなったりすること、あるいは消化吸収障害により大腸の水分の吸収が低下したり、腸壁からの水分の分泌が増えたりすることによって起こります。場合によっては、腹痛、悪心・嘔吐、発熱などの症状を伴うこともあります。
下痢を引き起こす原因は?急性と慢性ではどう違う?
急性下痢は持続期間が2週間以内のものを、慢性下痢は4週間を超えるものを指します2)。
<急性下痢>
急性下痢の原因は、9割以上が食中毒(細菌、ウイルス、フグやキノコなどの自然毒、化学物質など3))によるものです4)。他には、暴飲・暴食やお腹の冷え、香辛料や脂っこい物、アルコールなどの摂取、精神的ストレスなど、日常生活が原因になることもあります5)。
下痢になってしまったときは、湯冷ましやスポーツドリンクなどの水分を十分に摂るとともに、おかゆやうどんなど、加熱した消化の良いものを食べ、腹部を温めるようにしましょう。また下痢を起こさないためには、食中毒の予防だけでなく、食生活全体をふくめた生活習慣を改善することも重要です6)。
<慢性下痢>
慢性下痢は、過敏性腸症候群などの機能障害、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患、癌などの腫瘍、甲状腺機能亢進症などの代謝内分泌性疾患など、疾患が原因となるものがほとんどです。中でも過敏性腸症候群が最も多く、7~8割を占めています6)。
慢性下痢に対する対処法としては、原因疾患の治療はもちろん、生活習慣の改善も有効だと言われています。その内容としては
①規則正しい生活
②食事は1日3回、間食は控える
③水分を多めに摂取する
④適度な運動を行う
⑤油脂分、香辛料、炭酸飲料、アルコールの摂取を控える
などが挙げられます。加えて、ストレス解消の方法を見つけたり、ストレスを感じる環境を回避することも重要です4)。
【参考】
1)須河 恭敬 他:診断と治 療, 101(2): 205, 2013
2)厚生労働省: 重篤副作用疾患別対応マニュアル 重度の下痢, 2010
3)厚生労働省ホームページ: 食中毒,
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html
4)柳町 幸 他: 消化器科, 32(5): 442, 2001
5)細田 誠弥: 順天堂医学, 50(4): 330, 2004
6)熊本大学病院: 抗がん剤治療のおもな副作用とその対応Q&A, 74, 2008
7)鈴木 香峰理 他: 診断と治療, 98(Suppl.): 244, 2010