ドクターに聞く
「妊産婦のおしりのトラブル。いつもと違う気になる症状は肛門科へ。」
目次
おしりの症状があれば肛門科へ。
たいていの妊婦さんは、まず産婦人科の医師に相談されるようですが、産婦人科でもらった薬で治りにくい場合や、おしりに出っ張りや痛みなどの違和感、なかでも出血がある場合は肛門科を受診してください。「痔があるから」といって気にされない妊婦さんもいますが、他の病気の可能性もあるので放置はいけません。また、便潜血反応陽性の場合は消化器内科、肛門科を受診しましょう。
痔に関して言えば、手術で取らなければいけないものもありますが、取らなくても良いならうまく付き合うこと。それ以上悪化させないよう、原因を取り除いていくことが重要です。特に経産婦の場合、第一子を生んだ時にひどい目にあったから、第二子を出産する前に治したいと言われる方もいますが、一時的にひどくなっただけであれば、薬を使って治療していきます。また、妊娠中の痔で痛みや腫れ、出血がひどく改善しない場合は、安定期に入って手術をすることもありますが、出来るだけ当院では手術はせず投薬治療を行います。
日本橋レディースクリニック 院長
馬場真木子 先生
おしりの違和感には、痔以外のさまざまな原因も。産婦人科の薬で治りにくければ肛門科へ。
妊婦さんの場合は、まず産婦人科の医師に聞いてみてください。妊娠中はだいたい痔になりますから、広く使われている薬を処方されると思います。当然、使用しても大丈夫な薬ですが、もし治りが悪い場合や、おしりから何か出ている、または何かできているような違和感がある場合は、痛みがなくても肛門科を受診した方が良いでしょう。おしりまわりが化膿して腫れている時は、肛門周囲膿瘍という痔ろうの前段階の状態ですし、アテロームのようなおできや毛嚢炎(もうのうえん)というニキビのようなもの、疣贅(ゆうぜい)というイボができることもあります。ピリピリする痛みがひどい時は、肛門ヘルペスの可能性も考えられますし、稀なケースですが梅毒でもおしりまわりに違和感があります。さまざまな原因が考えられますので、かゆみも含め、ご本人が気になれば肛門科を受診してください。
妊娠中の痔の治療については、お薬を塗ったり、痛み止めの内服が可能であれば飲んでもらったりします。あとは、お風呂で温めてもらうなどですね。妊娠中の痔の手術は術後出血の問題もあってリスクが高いので、基本的には行いません。痔は命にかかわるものではないので、手術をするなら、出産を終えてからです。
マリーゴールドクリニック 院長
山口トキコ 先生
妊娠中の痔は、うまく付き合うことが大切。ただし気になる症状は自分で判断せず医師に相談を。
妊娠中の主治医は産婦人科の先生なので、産婦人科の先生にも相談してみてください。出産に耐えられないと判断した場合や、産婦人科の先生が専門医に相談した方が良いと判断した場合は、肛門科受診を勧められると思います。また、産婦人科の先生に相談しづらいこともあると思います。その場合も、薬で治るものなのか、あるいは様子を見てよいものなのかはご自分で判断せず、ぜひ肛門科を受診してみてください。インターネットでは「肛門の中に入れた方がいい」と書いてある痔も、外痔核の腫れが合併している時は中に入れることで痛みが増強し、悪化することもありますし、いぼ痔ではなく、ほかの肛門疾患である可能性もあります。適切な処置や適切なお薬で症状が軽快すると、快適に妊婦生活を送れるようになります。
いぼ痔は悪性に変わったり、転移したりするものではなく、良性疾患なので、いぼ痔があっても出産はできるし、妊娠は継続できます。患者さんには、「痔主さんはたくさんいますから、うまいこと付き合ってくださいね」とお話しします。妊娠中に痔が悪化しないための対処法としては、便秘・下痢をしないこと、いきまないこと、入浴して血流改善を促すことがお勧めです。
川堀病院
竹田春華 先生