ドクターに聞く
「すぐに病院に来てほしい症状」
目次
おしりから出血した場合は、ひとまず病院へ
おしりからの出血の場合、患者さんはたいてい驚かれますが、出血に関しても全て痔によるものとは限りません。来院された際は、まず血の色や出方をうかがいます。黒い血であれば胃や食道など上部消化管から、赤い血が混じっている場合は大腸からの出血ですので、その検査や治療を行います。一番多いのは、赤い血(鮮血)が出ると言う患者さんです。この場合は、肛門や付近の直腸、S状結腸などからの出血であり、肛門周辺のがんの可能性も考えられますので、できる限りすぐに検査を行います。また、まれにではありますが、内痔核が破れてひどく出血している方がいます。その場合は、その日のうちに手術をする必要がありますので、すぐに病院に行ってください。
岡崎外科消化器肛門クリニック 院長
岡崎啓介 先生
出血と脱肛は、早めの受診を
「出血」「脱肛」という二つの症状は病院に行った方が良いでしょう。痔核(いぼ痔)や脱肛による残便感は、市販薬で改善できることがありますが、薬を使うのをやめた途端にまた残便感を感じたり、お通じの際に脱肛してしまった場合は、市販薬では手に負えませんので病院で対処する必要があります。
また、裂肛(きれ痔)も軽いうちは市販薬が有効ですが、傷が治りきらないまま、また切れてを繰り返すと、慢性裂肛になってしまいます。こうなると痛みが長引き、ひどい人ならお通じの後1日中痛いといった状況が続きます。こうなれば受診してほしいですね。まれにですが、慢性裂肛がひどくなって潰瘍(かいよう)になり、その深い傷から細菌が侵入して膿瘍(のうよう)ができてしまうこともありますので、侮ってはいけません。
鮫島病院 院長
鮫島隆志 先生
出血を痔だと思って放置しておくと、
がんのステージは進行しやすい
肛門から出血した場合、市販の痔の薬を使っても止まらない時には、病院にかかって出血の原因をしっかり特定してもらった方が良いでしょう。大腸がんの可能性もありますから、自分で判断しない方が良いと思います。「痔には手遅れはないが、大腸がんには手遅れがある」ということです。これは当院で調べて論文にもしましたが、痔を患っている人で大腸がんが見つかった時は、ステージが進んでいる人が多い。痔だと思って放置してしまっているのです。ですから、40歳を過ぎたら一度内視鏡検査を受けてみることも大切です。日頃の検診を行っておけば、出血に関しては恐れることはありません。
痔ろうもがんになることがありますが、大部分をしめる単純な痔ろうではめったにありません。しかし、複雑な痔ろうはがんになることがあるので早めに手術することをお勧めします。
所沢肛門病院 院長
栗原浩幸 先生
出血や痛みは、痔以外の病気の可能性も
出血、痛みは絶対に一度病院に行った方が良い症状です。おしりが痛くて出血しているからといって痔とは限りません。肛門痛も直腸がんが原因のケースがありますので注意が必要です。われわれ医師も、いつもがんの存在を気にしながら肛門の診察をしています。
また、指を入れた時に鮮血でなく暗赤色の血が付く方が結構います。大腸がん以外にも、腸炎、クローン病、潰瘍(かいよう)性大腸炎などさまざまな病気がありますので、このような場合は、すぐに浣腸だけして短い大腸カメラを入れて観察しています。多くは虚血性腸炎や憩室(けいしつ)出血が原因ですね。これらはよく、痔による出血と間違えられます。このようにさまざまな可能性が考えられますので、出血の場合は一度で良いので必ず受診するようにしてください。
松田病院 院長
松田聡 先生
排便時以外の出血と、我慢できない痛みは必ず専門医へ
排便時に出血することはいろいろな原因でよくありますが、排便時以外にも出血する時は大腸がんなど命にかかわる疾患もあり、痔核(いぼ痔)と大腸がんの鑑別が必要なので専門医をすぐに受診してください。また、我慢できない痛みを伴う時も、切開して膿を出したり、血栓を除去する必要がありますので専門医を受診してください。単に脱出がある場合はすぐに受診する必要性は低いのですが、早い時期には注射一本(硬化療法)で治せる内痔核の脱肛が、放っておくと注射では治せなくなり、痛みを伴う治療法(切除する治療法)しか選択できなくなってしまいます。早期に受診する方がいろいろな治療法を選択できる利点があります。
大阪中央病院 外科 特別顧問
齋藤徹 先生