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漢方薬はどんな薬?一般的な薬との違いは?

漢方薬はわたしたちの身近にあり、たくさんの方が使用されている薬でもあります。ただ多くの漢方薬は、その人の体質や症状に合ったものでないと、十分な効果が得られないことがあります。漢方の知識を正しく理解し、ご自身の体質や体調、病気の症状に合った薬を選ぶことが大切です。

【1】そもそも漢方薬はどんな薬?

●生薬をベースにした治療薬
漢方薬は、さまざまな植物、動物、鉱物などから抽出した「生薬」と呼ばれる自然由来の原料を組み合わせた治療薬です。使用することで病気を治療したり、体のバランスを整えたりすることができます。現在日本では294種類の漢方薬が厚生労働省により認められており、そのうち148種類の漢方薬が健康保険の対象として病院で処方されています。

【2】漢方薬の特徴は?

●心と体の調和を重視し、体全体のバランスを整える
漢方薬には、現代科学でメカニズムの理解が進んでいるものもありますが、多くは古の中国医学から続く、経験の蓄積によるものが主流です。
基本的には、心と体の調和を重視し、体全体のバランスを整えることを目的としているため、個人の体質や特徴を踏まえたうえで、現在起こっている病気の症状に合った、処方を決定します。 また漢方薬には、複数の有効成分が含まれている生薬が、複数使用されるため、一つの処方でさまざまな症状に効果を発揮することが多いのも特徴です。

【3】本治と標治について

●第一に、病気になりにくい体をつくる
漢方では、まず病気になりにくい体をつくるため、体質を改善することがなによりも大切だと考えられています。
そのため漢方医学には、「本治」と「標治」という考え方があります。病気の原因に対して根本的に対処することを「本治」、病気の原因によって生じる症状に対して治療することを「標治」と呼んで区別します。漢方医学は、当面の苦しい症状は標治で対処し、同時に本治で原因そのものを対処するといったように、病気の対処と体質改善を同時に行うのが本来の姿です。

●漢方薬は長期服用しないと効果が無い?
標治に用いる薬には即効性が求められます。一方で、本治に使用される薬には、即効性のあるものもあれば、長期間服用することによって、改善を目指すような処方もあります。
一般的に、「漢方薬は長期間服用しないと効果が表れない」と言われることがありますが、これは本治を目的にした処方のことを言ったものです。

【4】漢方薬は、西洋薬とどう違う?

●ピンポイントで症状に作用する西洋薬。複数の症状に対応する漢方薬
西洋医学は科学的で実証的な医学です。そのため西洋薬は、多くが人工的に化学合成された物質です。ほとんどの薬は一つの成分で構成され、一つの疾患や一つの症状に強く作用します。
病気の原因が特定でき、原因に応じた治療が可能な場合や手術が必要な場合、救急な疾患や重症の感染症などには、西洋薬が効果的です。
これに対して漢方薬は天然由来の生薬を使用しており、一つの漢方薬は基本的に二種類以上の生薬で構成されています。多くの成分を含んでいるため、一つの薬でさまざまな症状に対応できるのが特徴です。 病院の検査では異常がないのに自覚症状があるような病気、原因の特定できない慢性の病気、体質がかかわる病気などには、漢方が効果的なケースが多く見られます。

●病気や症状にあわせて使い分けることが大切
漢方は「個の医学」 といわれ、個人の体質・特徴を重視します。また心と身体は一体であるという「心身一如」 を前提にしているので、一つの器官だけを重視せず、身体全体の調和をはかることを目的としているのが特徴です。 現在の医学は西洋医学が主流ですが、近年は欧米諸国でも代替・相補医療として、漢方を含めたさまざまな医療が研究されています。また日本では、現在148処方の漢方薬で健康保険が使えるので、漢方薬がより身近なものになっています。お薬を選ぶ際には、病気や症状にあわせ、西洋薬と漢方薬を使い分けることが大切です。

【参考】

1)芝野 真喜雄 著: ミニマムファクター 漢方生薬学, 第2版, 京都広川書店
2)世良田 和幸:昭和医会誌, 64(1),2,2004

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