便秘だけでなく、下痢も痔の原因に?その理由と対処法
痔の原因としては、よく便秘による肛門への負担があげられますが、下痢が原因になる場合もあります。きれ痔(裂肛)は、勢いよく出る下痢便が肛門を通過する際、その刺激で肛門の皮膚(肛門上皮)が裂けることでも起こります。また、肛門は内側の粘膜部分と外側の皮膚部分をもつ器官であり、その境目である「歯状線」と呼ばれる部分にある小さなくぼみ「肛門陰窩(こうもんいんか)」に下痢便が入り込み、細菌に感染すると化膿性の炎症を起こし、これがさらに悪化すると痔ろうになります。
きれ痔(裂肛)の症状と痛みのケア
きれ痔(裂肛)の症状としては、排便時の強い痛みと出血があります。出血は多くはありませんが、痛みに関しては、肛門外側の皮膚部分(肛門上皮)に、痛みを感じる知覚神経が通っているため、便が傷口を通過するたびに強い痛みを感じます。また痛みによる内肛門括約筋のけいれんが、さらに激しい痛みを引き起こします。
きれ痔(裂肛)は一時的に起こり4~5日で自然に治ることもありますが、悪化するのを放置したり、繰り返し発症したりすると慢性化します。そうなると、皮膚表面の潰瘍化や肛門が狭くなる肛門狭窄を引き起こす、慢性裂肛になる可能性があります。慢性裂肛の多くは、外科的治療が必要になりますので注)、早めのケアを心がけてください。
痛みへの応急処置としては、おしりを温めて血行を促すのが効果的です。なるべくぬるま湯にゆっくり浸かるのがポイントなので、体に負担の少ない半身浴や、おしりをぬるま湯につけ、患部を温めると良いでしょう。また多くの痔の薬は、痛みを緩和する成分を配合しているので、使用することで痛みを和らげることができます。
注) 稲次 直樹: 日本大腸肛門病学会雑誌, 58: 825, 2005.
痔ろうの症状と痛みのケア
肛門の粘膜部分と皮膚部分の境目(歯状線)に、肛門陰窩と呼ばれる小さなくぼみがあります。ここに便中の細菌が入り、化膿性の炎症を起こしたものが肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)です。下痢の場合、液状の便が小さなくぼみに侵入しやすいため、原因の一つとなります。症状としては、はれや痛みに加え、38~39℃の発熱を伴う場合があります。
肛門周囲膿瘍が進行し、たまった膿が出ると症状は緩和されますが、肛門の中と外がトンネルでつながってしまい、膿が常に出ている状態になります。これが痔ろうです。肛門周囲膿瘍になってしまうと、自分で治すことは不可能ですので、これらの症状が出た場合は早急に専門医に相談してください。
痛みのケアについては、いぼ痔(痔核)やきれ痔(裂肛)のように温めてはいけません。さらに症状が悪化してしまいます。横になって患部を冷やすようにしてください。