痔に効く漢方薬、それに使われている生薬はどんなもの?
漢方薬は、有効成分を持つ生薬と呼ばれるものを配合してつくられます。このページでは、痔に効く漢方薬に含まれる生薬の種類や、処方箋なしで購入できる痔に有効な市販の漢方薬を見ていきます。
【1】痔に効く漢方薬に使われている生薬
●痔の治療に使われている、漢方薬に入っている代表的な生薬は?
漢方薬の原料となるのが、生薬です。生薬とは、植物や鉱物、動物のなかで薬効があるとされる物質のこと。漢方薬は、基本的には2種類以上の生薬を、決められた量で組み合わせてつくられます。痔に有効な漢方薬に使われている、代表的な生薬を紹介します。
当帰(トウキ)
セリ科の植物である、トウキやホッカイトウキの根からつくられる生薬。血流を良くすることで、痛みを取る効果があります。手足の冷えや、月経不順、貧血が原因の婦人病など、女性に多い症状にも効果が高いとされています。
桂皮(ケイヒ)
クスノキ科のケイ(トンキンニッケイ)の樹皮を乾燥したものです。体を温めて寒気を改善したり、発汗による解熱、鎮痛効果があるほか、健胃・整腸作用があり、胃弱や食欲不振の改善などにも用いられます。香辛料としてはシナモンとしても知られています。
大棗(タイソウ)
クロウメモドキ科のナツメの実を乾燥させたものです。胃腸の機能を整え体を温めることで、精神を安定させる作用があり、筋肉や神経の緊張、咳、腹痛などを緩和するために用いられます。
生姜(ショウキョウ)
食品としてもなじみの深いショウガのことで、細くなった血管を拡張させ、血液の流れを良くする作用があります。ほかにも、抗炎症、抗菌、吐き気止め、消化促進などの作用があります。
芍薬(シャクヤク)
ボタン科の多年草、芍薬の根を乾燥したものです。鎮痛・鎮静・抗けいれん・血管拡張・抗炎症など幅広い効果があるとされており、筋肉のこりやけいれんを抑えるほか、腹痛や下痢の緩和などにも利用されています。
甘草(カンゾウ)
マメ科の植物である甘草の、根や根茎を乾燥させたものです。鎮痛や胃腸機能の調和といった作用があり、ストレスをやわらげ、免疫力を高めるほか、ホルモンバランスを整える効果もあります。生薬以外にも、甘味料として食品にも用いられています。
麻子仁(ましにん)
麻の果実を原料とする生薬です。血液の循環を滑らかにして、臓器の機能や新陳代謝を増進。腸を潤すことで、排便を促進するなどの効果があります。七味唐辛子にも調合されています。
大黄(ダイオウ)
タデ科ダイオウ属のなかの、いくつかの植物の根を乾燥させたものです。血液の流れが滞っている瘀血(おけつ)の状態を改善する駆瘀血剤で、胸腹部の膨満や腹痛、便秘、排尿の悪さなどを改善します。
【2】痔に効く漢方薬
●漢方薬選びには、まずご自身の体力の把握を
漢方薬では、病気の症状だけでなく、その人の体質や体力に合ったものを選ぶことが大切です。そのため漢方薬には、適応する体の状態を、「体力が充実」「比較的体力がある」「体力中等度」「やや虚弱」「体力虚弱」の5段階に分けて記載しています。体力中等度以上が、通常の生活をするのに差しさわりが無いぐらいの体力ですので、ご自身の体の状態に合わせてお薬を選びましょう。
●便通改善から出血の抑制、血行促進まで
痔に効くとされる、代表的な漢方薬を紹介します。お薬の選択基準となる、ご自身の体力状況について判断つかない場合は、まず体力虚弱や体力中等度以下の漢方薬を選んでみても良いでしょう。
当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)
体力虚弱で疲労しやすく、血色のすぐれない方でも使用できるお薬です。痛みを鎮める役割を持つ生薬が配合されており、痔や脱肛の痛みの緩和に用いられます。また、血流改善の役割を持つ生薬も配合されているため、痔が悪化しにくい体質づくりも目指せます。それ以外にも、月経痛、月経困難症、月経不順、腹痛、下腹部痛、腰痛、などの症状にも用いられています。
乙字湯(おつじとう)
体力中等度以上で、大便が硬く、便秘の傾向がある方が使用できるお薬です。排便をうながし、便秘を改善することで、硬い便による肛門への負担を緩和します。患部の炎症を抑えたり、肛門付近のうっ血による腫れを改善する効果が期待できます。
麻子仁丸(ましにんがん)
体力中等度以下で、ときどき大便が硬くなり、固まってしまう方が使用できるお薬です。大腸を潤し便を柔らかくすることで便通を改善します。痔の症状以外にも、便秘にともなう頭の重さ、のぼせ、湿疹、皮膚炎、ふきでもの、食欲不振などの緩和にも使用されます。