痔の予防や症状の緩和には、おしりの血流改善が効果的。
いぼ痔は血液の環流障害によるうっ血が原因とされる説や、きれ痔は肛門上皮の虚血が原因とされる説など、痔の原因として血流障害は有力な説とされています。また、おしりの血液循環の改善が痔の症状緩和に効果を発揮することも知られており、痔の予防法としてもおしりを温め、局所血流をよくすることは重要です。
血管の構造と役割1)
血管は血液が流れる管(パイプ)であり、パイプの内側にあたる”内腔”と、パイプの外壁となる”血管壁”から構成されています。
血管には、心臓から送り出された血液を身体のすみずみまで流す「動脈」と、動脈によって臓器に送り込まれた血液を心臓に戻す「静脈」の2種類が存在します。 動脈は内腔が狭く、内側から、薄い「内膜」・厚い「中膜」・「外膜」の3層の膜が重なる厚い血管壁に囲まれ、弾力性があります。一方、静脈は動脈同様に3層の膜で血管壁を形成していますが、内膜、中膜が薄いため血管壁の弾力は強くありません。動脈よりも繊細な静脈を流れる血液は、体内の約75%とも言われており、おしりの静脈の血流障害は痔の要因のひとつでもあります。
血行が良い、悪いとは
血管は拡張と収縮を繰り返すことで弾力性を保っています2)。血管が拡張すると血液はスムーズに流れるようになり、血行が良くなります。また血管の周りの筋肉も緩み、血行を促す働きがあります。対して、血管が収縮すると血液が流れにくくなり、血行の妨げとなります。血管の周りの筋肉が緊張して収縮することも血行を妨げる原因となります。寒さや体の冷えなどは血管の収縮につながりやすく、血管を拡張し血管の健康を保つには、適度に体を温めることが効果的です。
血流改善のためにできること
入浴やマッサージ
浴槽につかる入浴は、血流を良くすることが知られています。また、マッサージをすることにより、静脈から心臓へ戻る血液の量が増加し、空いた末梢の血管に新しい血液が流れ込むことで血液循環を改善する効果があるとされています3)。
血流改善効果があるとされる食べ物の摂取
漢方やインドのアーユルヴェーダでよく使用されるヒハツには、血流促進の効果があると言われています。また近年、血流促進効果のある機能性乳酸菌も発見されています4)。これらを食事やサプリメントなどで摂取することも血流改善につながります。
鍼灸治療5,6)
鍼や灸による治療は、古くから血流改善効果があるとされてきましたが、近年ではそのメカニズムの研究も進められ、科学的根拠のある治療法として、世界的に注目されています。
【参考】
1)矢田 俊彦: からだと病気のしくみ図鑑
2) 岩瀬 敏: KAO HEALTH CARE REPORT, 58: 2-5, 2018.
3) 原田 脩平 他: 第44回日本理学療法学術大会 抄録集, Vol.36 Suppl.(2): P3-585, 2009.
4) 立垣 愛郎: Comprehensive Medicine, 17(1): 8-19, 2018.
5) 矢野 忠、川喜田 健司(編): 『ここまでわかった鍼灸医学―基礎と臨床との交流』,公益社団法人全日本鍼灸学会, 2011.
6) 「科学も認めるはりのチカラ」: 公益社団法人日本鍼灸師会, 2017.